顎がポキッとなったら

 私の顧問税理士で友人でもあるM氏が診療室を訪れた際に「家内の顎がポキッと鳴る状態になって大変だった」という話をしてくれました。これは顎関節症の症状の1つで、顎の関節の中にあるクッション(正確には関節円板と言います)がずれたことで起きます。私が大学病院にいた時の研究テーマでした。あまり心配する必要はありませんが、口が開かなくなったり無理矢理開けようとすると痛みもあり、そうなるとやっかいです。

つい先日、私のスタッフの一人が、このクッションがずれた状態になり、口を開けるたびにポキポキ音がしだしました。初発症状を目撃するという大変貴重な体験をしたのですが、顎の構造を説明し、開けようと無理をしないこと、クッションを元に戻すような顎の位置をとるよう話したところ、程なく治り今は全く症状はありません。

もともと症状が出てから2週間以内に治療を受けると予後がよいと言われていましたが、早期の対応の大切さを改めて実感しました。

ということで、口を開けるたびに顎がポキッとかカクンとか鳴っている方は、これが何故なるのかを知っておいて損はありません。図はクインテッセンス社の文献から抜粋改変したものです。顎の関節は耳の穴のすぐ前にあり、口を開ける時は回転しながら前方に滑走します。もしクッションの厚みのある部分が前方にずれていると、開けるたびにそれを乗り越えることになり「ポキッ」と音がするのです。そしてずれたまま引っかかって乗り越えられなくなると口が開かなくなったり、痛くなったりするのです。診療室の窓口でご相談を受けたこともありますが、皆さんも口を開けるたびに顎が鳴っていたら要注意、引っかかって開かなくなる前に経験を積んだ歯医者さんに相談してみてください。

Date: 2004/05/16

フッ素を摂りましょう

 いい加減に白状しろと言われるくらい無口になっております。今回はフロスに続く予防シリーズでフッ素のお話です。

 フッ素は虫歯の予防に有効と言われています。

 反対意見もありますが、物理的に歯の表面の性質を改善したりムシ歯菌の活動を抑制することは確かで、海外の統計的な調査でも明らかに虫歯になる歯の数は減っています。でも毎日の生活の中で確実に取り入れていくのは意外と難しいものです。水道水の中に添加するのは一番簡単ですが利用者が選択出来なくなるので合意を得られにくい方法です。また、フッ素はとても大量に摂るとお腹が緩くなったりすると言われていますし、分類では劇薬の部類ですから手放しでどうぞと言うわけにもいかないものです。私は、大人になっても1〜2ヶ月に1回くらい髪の毛を整えるように歯科医院にフッ素塗布に行く生活習慣があっても良いと考えています。元気に美しく年を重ねるなら、まずは体を健康に保つことです。予防には予算を割けないお国の事情で有れば(こちらの方がずっと安上がりなはずなのですが)ご自分の身を守るために自ら気をつけるしかありません。治療を生業とする私たちの収入は一時的に減るでしょうが、歯がしっかり残せて、皆さんが元気で長生きされるようになれば、仕事はむしろ増えるでしょう。私たち歯科医にとっても虫歯を減らすことは望むところなのです。歯をほったままにしておいて傷つけてから埋め合わせをするより、綺麗なままに保つ工夫をしませんか?

Date: 2004/04/25

糸ようじ(デンタルフロス)を使いましょう

 本年最初のひとり言です(勉強会の準備もしないでこれを書いてたことがばれるとまずいのですが、煮詰まってしまって・・・)

 矯正治療中に歯と歯の間に出来た隙間を見ると、隣りの歯とくっついていた部分(隣接面といいます)が白くなっていたり、虫歯になっていることがあります。これは大人の方によく見られます。とても綺麗に歯を磨いていて虫歯の治療の痕がほとんどない方にも、隣り合った部分や歯の重なっているところには虫歯菌がかじった痕を見つけることが多々あるのです。

 これだけ世界の状況が変わるとこれは微妙な表現なのですが、いわゆる先進的な社会で虫歯が増えている国は日本だけと言われています。これには砂糖の消費量の多さとかフッ素の摂取量の少なさとかいろいろな要因が考えられていますが、こと隣接面の虫歯に関しては私なりに理由を考えています。それは日本では「糸ようじ(デンタルフロス)」を使う習慣が広まっていないことです。日本人はとても器用なので歯ブラシだけで歯を磨ききれると思われているのかも知れませんが、隣接面のように毛先が届かないところの虫歯菌は除去することが出来ないのです。

 糸ようじを使うと「歯肉が下がる」とか「歯の間が開く」と言った心配をされている方もいらっしゃいます。あまりに乱暴な使い方をされると歯肉が下がることもあるかも知れません。でも隙間が開いてくると言った心配はまずありません。そんなに簡単に歯が動くのなら矯正治療などは患者さんご自身で出来るはずですから。

 隣接面の虫歯の予防には、糸ようじはとても有効な手段です。使い方についてはかかりつけの先生ところで教えていただけます。毎日とは言いません、曜日を決めて一週間に一回お使い頂くだけでも効果はかなり期待できますよ。

Date: 2004/01/19